寒い日が続き、暖かい飲み物がいただきたくなりますね・・・
厳冬の北ヨーロッパではフォーティファイドワインという甘いワインが人気です。

通常、ワインのアルコール度数は10~14度ですが、フォーティファイドワインは15~22度と高め。酒精強化といって、普通のワインにアルコール度数の高いブランデーを足してアルコール度数をあげています。赤ワインからも白ワインからも作られますし、味わいは辛口~甘口まで様々。ワインのアルコール発酵を最後まで終えてからブランデーを足すと辛口になり、アルコール発酵を始める前(果汁の状態)や、途中で加えると甘口のワインになります。アルコールを足すことで酵母の働きを止め、長期間保存可能な長命なものになります。

世界で最も有名なフォーティファイドワインはスペイン南部、アンダルシア地方の「シェリー」ポルトガル、ドウロ川添いの「ポート」、ポルトガル領、マディラ島でつくられる「マディラ」。
この3種を世界三大酒精強化ワインと呼び、さらにイタリアはシチリア島の「マルサラ」、南フランスでつくられる「ヴァン ドゥ ナチュレル」「ヴァン ドゥ リクール」なども、このフォーティファイドワインの仲間です。
寒い冬、ポルトガルやフランスのカフェではお菓子と共に甘いポートを多くの人が飲んでいますし、ドイツやオランダ、イギリスでは琥珀色の甘口シェリーが愛飲されています。イギリスでシェリーというとクリスマスのお酒や、お年寄りの甘い寝酒。歴史的には貴族などの上流階級のお酒として宮廷で流行した時代もあります。
コクがあり、ドライフルーツやナッツ、スパイスの香りの甘いお酒は寒さでかじかむ体と心を優しく癒してくれるからでしょう。

さて、これらの酒精強化ワイン。いつ頃、どうして生まれてきたのでしょう?
ワインは古くはメソポタミア文明まで歴史を遡ることができ、ローマ帝国の勢力拡大やキリスト教の布教活動とともにヨーロッパ中に広まりました。冷涼な気候の北ヨーロッパで作られるワインは色の薄い、酸度の高いワインでしたが、キリスト教の祭事に使用するためなら、それで十分です。が、12世紀~19世紀。商業的な交易圏が確立していくと、裕福な人々は南の温暖な地域でできる色の濃い、凝縮した果実味と高いアルコール度数の、「飲みごたえある美味しい」ワインを求めるようになります。

宗教とともに広まったワインですが、時代と共により「商業的」となり、中世には南部のワインは南ヨーロッパにとって重要な輸出品になっていきます。南スペインのシェリー、大きな港で熟成され出荷されるポート。大西洋の温暖な島で作られるマデイラ。南フランスの酒精強化ワイン達・・・これらは多くが大航海時代に新大陸へ向かう船の出発、寄港する港だったり、海上貿易で重要な拠点です。フォーティファイドワインは、もともと温暖な南の国のアルコール度数の高いワインの保存性をさらに高め、遠くへ運ぶために作られたワイン。起源は定かでありませんが、14世紀ごろではないかと言われています。

さて、フォーティファイドワインの誕生と発展にはイギリスとスペインが深く関わっています。15世紀~16世紀世界の海洋貿易を牛耳っていたのはスペインとポルトガルでした。イギリス人はワインが大好きでしたが、冷涼な自国では大量生産できない上、ヘンリー8世が改宗するとき、修道院とともにブドウ畑を潰してしまい、どうしても海外の輸入品に頼らざるを得ません。当時からシェリーが人気でしたが、スペインとイギリスには繰り返される戦争や深い宗教的、政治的な溝があり交易は常に順風満帆とはいかなかったようです。

国内外に問題を抱えるイギリスを横目に、ポルトガルやスペインの商船団が大量のワインを積んで海上を航行する・・・。喉から手が出る思いだったことでしょう。ついに1583年、イギリスの海賊フランシス・ドレイクがスペインの港を襲い3000樽ものへレスのワイン(シェリー)を奪ってロンドンの宮廷へ持ち去りました。これが当時のエリザベス1世の宮廷に広まり、貴族の間で大変もてはやされます。同時代に活躍したシェークスピアの作品にも盛んに書かれ、イギリス人の手によって世界中に広められていきます。

18世紀になると新大陸との貿易の支配権はオランダ、イギリスへうつります。宵越しの金は持たないよと、贅沢に富を使い切ったスペインに対し、イギリスやオランダは少しずつ新大陸交易との富を蓄え、資金を資本に産業革命をなしとげ、工業、商業の中心的存在になるのです。・・・童話「ありときりぎりす」をご存知でしょうか?ちょっと似ていますね。

強い海軍力に裏付けられたイギリスやオランダの商人たちは、資源に最も近い南の国々の港に拠点を置き、ワインの買い付けと輸出を自ら行うようになり、徐々に自国で人気のある甘い味わいのブレンドを作っていくのです。

ポートのクロフト、サンデマン。シェリーのオズボルネ、ハーヴェイ。マディラのマルムジー、リーコックなどは、イギリス出身の商人で、現在も各地に根付き人気のあるフォーティファイドワインをつくり続けています。そうして作られたフォーティファイドワインは大航海時代には船乗りたちの大切な飲み物となりましたし、イギリスやオランダの交易品として重要でした。イギリス国内でも外国からの輸入品である甘いシェリーやポートは上流階級にのみ許された贅沢な嗜好品。現在、大人気を博するイギリスの貴族社会を描いたドラマでも食事シーンにシェリーが登場します。
イギリスの宮廷とつながりの深い日本でも、年末の皇居での昼食会で天皇陛下が食前酒に召し上がっていたのはシェリー酒でした。

シャンパーニュが華やかでラグジュアリーな時間を演出するお酒とするならばフォーティファイドはリラックスさせてくれるお酒。会話をゆっくり楽しむとき、読書のおともなど、ゆったりと贅沢な時間を与えてくれるお酒です。疲れた日。寒い日。ほっと心をいやすフォーティファイドワインをいかがでしょうか?




17e4d79bccd2ce873c7c0feb8fd0c83a_s
(女子のお悩み解決コラム -WomanNews ウーマンニュース-)