ワーキングホリデーVISAを取得し、オーストラリアに来てから2か月ほど経ったある日、銀行でお金をおろそうとしたら何故かカードが使えない・・。

機械の故障かと思って、他の場所でも試してみたが、やっぱりおろせない・・。

私は、限度額超えるほどカードで買い物するタイプではないし、一体何事かと思い、日本のクレジットカード会社に連絡をしてみた。すると、まさかのこんな答えが帰って来た。「ああ、お客様のカードは郵貯貯金の海外サービスで使われていましたね。この度、郵政民営化に伴い海外でのサービスを終了させて頂きました」と。

一瞬、理解に苦しんだよね。でも、何か終了しちゃったらしいからもう無理だよね。

郵便局のおばちゃん、海外サービス申し込んだとき、あと数ヶ月でこのサービスが終わりますなんて、一言も言ってなかったよね・・。酷いよね。


ということで、はい。私は渡豪2か月くらいでもう日本の貯金が使えなくなりました。


さて、どうしましょう。身寄りのない海外で所持金たったの80AU$と非常事態用に、返金せずに持っていた日本円が2万円。家賃も1週間分しか払えないし生きていてないでしょコレ。とりあえず、もうAU$を現地で稼いで生きていくしかないのだ。


とにかく、緊急に週払いでくれるバイト探さなきゃ。と大急ぎで探していたら、これまた日本人経営の怪しいバーの求人を発見。とりあえず何でもいいからやりながら良い仕事を探そう。と、とりあえずそのお店にも申し込んだ。ところがそこがバーどころかキャバクラの様なお店で、そういう接客をしたことのない私は完全に浮き、そして馴染めなかった。唯一歌が歌えたのが救いだった、歌っていれば接客しなくていいし。

急いで他の仕事も探しました。何件もまたレジメを配り歩き、一軒のレストランでそれを渡して帰ろうとした時に「ね、ちょっと待ちなよ」と日本語で呼び止められた。「きみ、和食の経験すごいね。」呼び止めてくれたのは、Yoshiiさんという板前さんだった。わたしは、日本に居た時に、音楽の傍ら日本料理屋さんでずっと着物を着てアルバイトをしていた。

「英語もちょっとは話せるんでしょ?」「はい、普通の接客はできます」というと、「ちょっと改めて面接にきなよ。○○日においで。」と誘われた。

「ありがとうございます!」と深々お辞儀をして店を後にした。家に帰ってから調べると、そのお店は、シドニーでも有名な日本料理のお店で、Yoshiiさんは、あの「美味しんぼ」のマンガに何度も登場しているような有名な寿司職人さんだったのです。

そんな方に呼び止めてもらえて、自分はどんなにラッキーなのだろう。絶対に面接に受からなければと思いました。


面接の日、緊張しながらその店に向かうと、重たいドアの向こうには立派なカウンター、テーブルがいくつかと、個室がありました。面接は個室で、声をかけてくれたYoshiiさんと、店のマネージャーだというオーストラリア人の男性が居ました。緊張の中、英語と日本語の混じった面接を受け、何とか気にいってもらえたようで採用されました。

アラカルトのない、完全コースメニューのみの高級なお店だったので、全てのコース内のお料理を日本語と英語で覚え完璧な接客をしなくてはいけなかったし、大きなワインセラーもあったので、定期的にワインの講習会の様なモノもあり、一品一品の料理に合うワインも覚えなくてはいけませんでした。それは自分の今までの英語力をはるかに超えていたので、最初はひどく大変で、マネージャーに発音がおかしい!何度も直されながら、辛くて泣きながら仕事をした日も何日かありました。


休み時間や家に帰ってからはいつも、英語の発音の練習をしていました。でも、あのキャバクラの様なバーに、私は長居する気はなかったのでそちらは静かにあっさりと抜け、仕事は厳しいけども、やりがいのあるこのレストランで頑張って働くことに決めたのです。オーストラリアのビジネスマンやお偉いさん、セレブ達が次々と来店し、素晴らしい料理だと喜んで帰って行きました。「美味しんぼ」の刈谷先生も、オーストラリアの来ると必ず顔を出してYoshiiさんの料理を食べるらしく、私もお会いする機会がありました。このレストランのお蔭で、私のシドニーでの生活が支えられ何とか現地で稼ぐAU$のみで生活できるようになっていったのだ。


Yoshiiさんは、本当に舌の繊細な人でタバコはもちろん、お酒も飲みませんでした。「美味しんぼ」で有名になったのは、Yoshiiさんのお料理の中でも「ウニの軍艦巻き」。普通、ウニの軍艦巻きって海苔で巻いてあるでしょ?Yoshiiさんは、海苔は味が強すぎるから、と言って海苔のかわりに、薄く切ったきゅうりを使うのです。その発想には本当に驚きましたが、それを食べさせていただいた時に本当に全然違って、ウニの味が生き生きとして物凄く美味しかったのを覚えています。本当にお料理の美味しいお店でした。

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(女子のお悩み解決コラム -WomanNews ウーマンニュース-)