刺激的な海外生活、その中で一番刺激的だったのがこの事件です。

シェアハウスで同居している女の子、サヤカが酒乱なのは一緒にクラブに行った夜の騒ぎで、とても良くわかりました。その夜以来、家で彼女に会うのが少し怖くなったので避けるようにして生活していました。でも、話さなくても彼女が、朝家の玄関の前で倒れていたり、家に帰るとキッチンやリビングのモノが壊れていたり。時折そんなことがあり、少しビクビクしながら、でも会えば笑顔でなんとかやり過ごしていました。

私の部屋に付いているテラスは、とても素敵でお気に入りでした

。彼女の酒乱のことを差し引いても、それに勝るくらいに好きでした。うん、あの日までは・・。私が仕事のない休みの日でした。夕方、家でご飯を作り、オーナーも居たので2人リビングで仕事やニュースなど、他愛もない話をしながら一緒に夕食を食べていました。

すると、急にガシャーーーン!!と、2階のサヤカの部屋から酷い音がしました。

数秒後、ボーイフレンドが階段を駆け下りてきて血の気の引いた顔で「ごめん、僕はもう彼女に付き合いきれない」と言い捨て足早に玄関から飛び出して行きました。

それを追いかけるようにバアーーン!!と、大きなドアの音を立ててサヤカが喚きながら出てきました。「オイッ!!Where are you going??Ha?(どこに行くんだよ!はあ?)」「オイ!!」明らかに酔っぱらった彼女が、壁を伝いながら大声で喚き散らしながら下に降りてきました。

嫌な予感というか、なんだか背筋が凍るようなそんな感じがしました。もちろん千鳥足の彼女が足早に逃げるボーイフレンドに追いつく訳もなく、やっとという感じで玄関に辿りついた彼女が玄関から外に向かって、逃げた彼に汚い暴言を吐き続けました。

見かねたオーナーが、「Please don’t do this. (サヤカ、お願いだからやめてくれ。周囲が驚くよ)」と一生懸命なだめましたが、彼女は玄関で叫ぶのを辞めず。オーナーが少し無理やり玄関から彼女を引きはがしドアを閉めました。

次の瞬間、”What!?Nooo!!” と一瞬聴こえたかと思うと、大柄のオーストラリア人男性であるオーナーが、日本人のサヤカをボッコボコに殴り始めました。

何が起こっているのか私には分からず、泣きながらオーナーに”Stop it !! Please stop it!!”「やめて!お願いやめてください!!」震えながら言いました。二人がリビングの棚やランプをガシャンガシャンと、なぎ倒しながら酷い騒ぎでもみ合いました。

そして、オーナーが、必死の表情で彼女を殴りながら「違うよ、ゆき!こいつが俺の指を噛んでいるんだ!」と叫びました!よく見るとサヤカが、オーナーの右手に噛みついていました。サヤカは殴られ、絨毯に真っ赤な血が飛び散っても噛んだ指を離しません。

オーナーは一生懸命彼女を引きはがそうとしながら、青い顔をして「ゆき!警察を呼んでくれ!早く!」と私に言いましたが、私はもうパニックで電話をしようにも番号も思い出せません。「000!」オーナーに叫ばれてようやくキッチンの電話から、震える手で警察に電話をかけ、泣きながらパニックの中でやっと住所と今の状態を伝えました。電話対応の女性に「あなたは安全なのか?」と聞かれた時に、後ろから受話器を取られました。右手に血だらけのタオルを巻いたオーナーが、手短に状況を説明し、受話器を置きました。

「サヤカは気絶しているよ、申し訳ないけど腹を殴ったよ。僕も限界だったんだ。」恐る恐る後ろを向くと、彼女はリビングに倒れていました。絨毯は血まみれで鳥肌が立ちました。オーナーは冷蔵庫から氷を出し、ボールに入れて青い顔で手を冷やしていました。私は、彼女がムクりと起き上がってまた騒ぎ出すんじゃないかと恐怖でいっぱいでした。

数分後、警察と消防車と救急車が全て駆けつけ、10人以上の人が家にやってきました。近所の人も騒ぎを聞いて警察に通報していたようです。オーナーは救急隊に囲まれ、指が”Nearly Off”(取れる寸前)だと言われていました。警察は「すごい女だな」のようなことを言って、気絶している彼女を起こそうとしました。「手錠をかけてからの方がいい!」オーナーが叫んで、警察はその通りにしました。警官に頬をペチペチとはたかれ、「ほら、起きろ」と言われて数秒後、彼女が目を開け血まみれの顔でまた叫びだしました。「あんたたち誰よ!私に触るんじゃないよ!」警官たちも呆れた表情で「いいから来い」と暴れる彼女を警官3人がかりで抑えながら連れて行きました。パトカーに入れられても彼女の叫び声はまだ聞こえていました。

オーナーは緊急手術を受けることになり、「ゆき、申し訳ない今日は一人だけど。サヤカも帰ってはこないから安心してくれ。行ってくる。」と私を残して行きました。

2人と大概の警察官や救急隊員が出て行き、部屋に2人の警官が残りました。そして、私に「さて、君は英語がしゃべれるのか?何歳だ?」と聞きながらソファーを促し、私に事情徴収を始めました。オーストラリアに来てまだ2か月、大きな2人の警察官から目の前で起きた流血事件の事情徴収を、英語で受けるのは大変でした。日本語でも受けたこと無いのに。でも、彼らも辛抱強く最後までしっかり私の話を聞いてくれました。

最後の警察官達がサヤカの部屋を少し調べ、ようやく玄関のドアを閉めて出ていくと、私はまた色々な恐怖と困惑が溢れ咽び泣きました。一度、そのまま自分の部屋に帰ってしばらく一人で泣き、オーストラリアに来て初めて「日本に帰りたい」と思いました。日本でちゃんと結婚していれば、こんなことにはならなかったのに。

ひとしきり泣いて、喉が渇きキッチンに行くと、リビングソファーや絨毯に飛び散った血にまた鳥肌が立ち、もう見たくないからどうにかしなければと思いました。

洗濯用の洗剤を絨毯に振り撒き、水をかけておフロのブラシで擦りました。掃除をしているうちに、また涙が出てきて泣きながらリビングを片づけました。でも、それ以上血痕を見るよりは幾分ましでした。サヤカは留置所で、オーナーは病院で、私はベッドの中で眠れないまま朝を迎えました。

翌日、オーナーは帰ってくると私に「こんな事が起こって申し訳ない。彼女はもうこの家には近づかないように警察に頼んだから、安心してくれ。」と言いました。

でも、すでにもう私は心の中に引っ越しをすることを決めていました。大好きな自慢のテラスを諦めてでも・・。

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(女子のお悩み解決コラム -WomanNews ウーマンニュース-)