“These foolish Things (Remind Me Of You)”この曲は、歴としたイギリス製の曲であり、当初1935年にイギリスの国営放送「BBC」(British Broadcasting Corporation)の音楽番組の為に書かれたのだが、結局使われず1936年の1月にキャバレー・スターで「BBC」の歌手でもあったレスリー・’ハッチ’・ハッチンが最初のレコーディングをしたようだ。


次いで1936年の4月1日からロンドンの「サヴィール劇場」で209回公演されたレヴュー”Spread It Abroad”の中で歌われ注目された。アメリカ生まれでロンドンをベースにしていたドロシー・ディクソンが歌ったという説があるが、彼女はレコーディングを残さなかったようだ。他の説としては、イギリスのコメディ女優ジュディ・キャンベルが歌ったとされている。二人で交代に歌ったのかもしれないが、ブロードウェイのミュージカルと違って、この頃のイギリスのレヴューについては資料に乏しく詳しいことが分からない。


そして、アメリカ人ながら、当時ヨーロッパで活動していた「ベニー・カーター・オーケストラ」や「ロイ・フォックス楽団」が1936年の4月にロンドンでレコーディングした。


また、同年5月ウィーン産まれの人気歌手グレタ・ケラーのパリ録音盤がヒットしている。


“These foolish Things”の日本語タイトルは「思い出のたね」とされているが、これにはあまり歌われないヴァースがあって「君は決して僕がしたいようにさせない 僕を自由にはさせないんだ 僕たちのしがらみは今でも僕たちを縛っている・・」と前置きをした後、「口紅のついた吸いかけのタバコ 素敵な場所に行ける航空チケット そんなつまらないことを思い出して 今でも僕の胸は躍るのさ / 君はやってきて僕に出会い 僕を虜にした あれはいつだっただろう でもいずれこうなると何となくは分かっていた / 3月の風で僕の心は躍るが 電話が鳴っても出る気が起こらない程 僕は未だに君の呪縛から逃れられないでいる あの頃のつまらないことが君を想いださせてしまうのさ・・」などと歌っている。普通はコーラスのこの1番だけを歌うことが多いが、歌詞は3番までしっかりついている。


この1番のコーラスの歌詞にある、「君はやってきて 僕と出会い 僕を虜にした」(You came, you saw, you conquered me.)というくだりは、古くジュリアス・シーザーが、ローマ元老院に報告として送った”V”を頭韻に”I”を脚韻にした簡潔な文章、”Veni Vidi, Vici” (来て 見て、勝った)の英語訳、”I came, I saw, I conquered.”をもじって洒落ている。


この、”Veni Vidi, Vici”(ヴェニ、ヴィディ、ヴィキ)という言葉は、よっぽどの愛煙家でも気付かないかもしれないがフィリップ・モリス社のMarlboro (マルボロ)というタバコの中央、王冠と馬をあしらった紋章の下部を虫眼鏡で見ると、これが小さく書き込まれている。フィリップ・モリス社の創業時の意気込みが感じられる。


ロンドンが元である同社のフィリップ・モリスは、彼の父親の煙草店を起源とし、1902年にアメリカに進出し、Marlboroなどの販売を始めた。


上記と並行してこの曲のアメリカ録音も盛んになり、1936年にルディ・ヴァリー、同年「ベニイ・グットマン楽団」で歌ってチャート1位にしたヘレン・ヴォード、同年「テディ・ウィルソン楽団」で歌ってチャート5位にしたビリー・ホリデーらがカバーし、たちまちジャズ化した。その後次々に、名だたる演奏者たちへと演奏され継がれてきた。


沢山の偉人たちが愛した曲だが、ボーカルテイクで有名なのは、1945年と1961年にフランク・シナトラ、1950年エラ・フィッツジェラルド。1952年にペギー・リー、1955年サミー・デイヴィス・ジュニアー、1962年ダイナ・ワシントン、1963年にサラ・ボーン等、数々のミュージシャン達がこぞって演奏している。


作詞(1901-1969)のエリック・マシューウィッツ(出版時はHold Marvellという偽名を使った) は、バーミンガム生まれで、 “A Nightingale Sang in Berkeley Square” などの作詞もしている。彼は英国ショービズ界の重鎮であったらしく作詞以外にも、数多くのミュージカル台本を手がけ、そのうち3本は、ロンドンで500回以上の上演を記録している。ロバート・ドーナットの映画「チップス先生さようなら」の脚色なども手がけた。またBBCの重役を長く勤めてもいた。


作曲の Jack Strachey も英国では有名な作曲家らしいが詳細は不明。作曲に名を連ねている Harry Link は米国の出版者であり、米国で出版するときに名前をリンクさせただけらしい。



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