高い家賃を払って住んだ、シドニーの高級住宅街のシェアハウスで流血事件が起き、私は引っ越しを決めた。今までの半額の安すぎる家賃で住める、おもしろい部屋を借りた。

そこのオーナーは60歳近い、おじいちゃんで、自分は離れの小屋に一人で住み、私をふくむ5人の女の子たちに、一軒屋を貸していた。簡素な部屋だったが、そこには愛があった「安全と健康が一番だ、君たちはこの家に居れば飢えることはない」というのがオーナーの口癖だった。2台の冷蔵庫のうちの一台に、FREE FOODと言って、安いものではあったが、常にパンや食料を用意してくれていた。週たったの$90の家賃でだ。今思い出しても涙が出る。髭こそないが、大きな体と、天使を思わせる大きなくりっとした優しい目、サンタクロースのような人だった。彼はきっと昔、天使だったのかもしれない。


しかし、そんな素敵なセーフハウスがあったのは、泣く子も黙らざるをえない、世界有数のゲイタウン”Darlinghurst”(ダーリングハースト)のど真ん中だった。なぜだろう、きっとあの家は、ここがゲイタウンになるより前からあそこにあったのだと、思うようにしていた。その家からでると、通りには虹色の旗がずらりとはためいている。レインボーカラーは自由の象徴として、ゲイタウンのシンボルマールのように、扱われていた。以来、私は虹柄の何かをみるとゲイタウンを連想する・・。

私は、この部屋を決める時、事件に疲れて前の家を出たい一心で半ばやみくもにこの部屋に決めた。だから、まさかそこがゲイタウンであることにも気が付いていなかった。虹色の旗がはためく明るくて楽しそうな街だな、くらいにしか思っていなかった・・。


ゲイタウンの朝は面白い、御揃いのショートパンツとスケスケのランニングシャツを着た中年男性カップルがお互いの腰を片手で抱きながら、並んでランニングをしていたり。夜は半端なく賑やかな通りにはなぜか、よく朝パンツが落ちていた。どうして、パンツを、道端に忘れていくのだろう?いったい何があって・・?他にもお金、洋服、電子機器など、色んなものがよく落ちていた。それを眺めたり時に写真をとって、私は楽しんだ。


お金は最初、見つけると交番に届けたりしていたが、届けると警官に不思議そうな顔をされたり、手続きが面倒でただ警官がそのお金を自分のポケットに入れたりすることに気が付いた。なので、馬鹿らしくなって自分のポッケに入れることにした。


夜になれば、そこら中で色々なカップルが街中でキスをしている。男と男、女と女、男と男、ごくたまに女と男。どちらかよくわからない人も沢山いた。馬に乗った警察が笛を吹き、通りを歩く。パトカーがサイレンを鳴らしながら街を走り抜ける。その警察達に愛想を振りまきながら、様々の人が路上で絡み合う。所々で悲鳴や歓声が聞こえ、誰かが大声で笑い、誰かが泣き叫ぶ。


でも、私が家に帰るには、必ずそのゲイタウンのメインストリートを歩かなければいけなかった。そんな通りを、小さいアジア人の女の子が毎日行き来していれば、嫌でも顔を覚えられる。”Hey, Kitty. Come on with me” (ねぇ、子猫ちゃんこっちにおいでよ)2mくらいあるオカマちゃん達によく声をかけられた。苦笑いしながら笑顔で通り過ぎる。きっと子供に見えるのだろう、1日に何度も「どうしたの?」「迷子?」と自分の住んでる街で声をかけられる。そのくらい私はその街にとって異物だった。毎日、ゲイタウンのメインストリートを通り抜け、セーフハウスに駆け込んで胸をなでおろす。全く、世の中は不思議でいっぱいだ。


「じゅんこさん、おねがーい!」
なんか、うるさい人だなぁ。今回シドニー留学の手続きを頼んだ留学エージェントの事務所に来ていた。じゅんこさんというのは、そこのエージェントであたしの担当もしてくれている、パリッとした素敵なお姉さんだ。


「わかったから、マリちゃんちょっと座ってて」「はーい」
やけに軽いノリで彼女と話す女の子がいた。ちらっとそちらに目を向けると、その子と目が合ってしまった。一応頭を下げて会釈をする。するとその子が近づいてきた。

「ねぇ、聞いてくれる?」きっと異国で、日本語がしゃべりたいのだ。「はい、なんですか?」振り向くと彼女は笑った。どうやら、彼女も職を探しているらしい。


「ファームに行ってきたんだけど、ぜんぜんダメ。すぐ帰って来ちゃった」


「へぇ、どうして?」「なんかずっと雨で作業ができなかったり、虫がいっぱいいて。仕事してると足に蟻が上ってくるし、あんな作業続けられない。」オーストラリアでは、3ヶ月間農場やファームで働くと、1年のワーキングホリデーVISAをもう一年延長し、全部で2年間滞在できるセカンドVISAの申請許可がおりる。彼女はそれを取ろうとしてファームに行き、1週間で帰ってきてしまったらしい。確かに大変そうだ。


「どこに住んでるの?」「Darlinghurst」「へえ、ゲイタウンじゃん、おもしろい?」「うーん、変な人がいっぱいいる」「へえ、マリはBondi(ボンダイ)だよ。OX Ford繋がりだね。今度遊びにいっていい?」OX Ford St.は、長く伸びていて、その子の住んでいる街とも繋がっていた。「いいよ、どうせ暇だし」電話番号と名前を交換して別れた。

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