始めは、びびりながら住みだしたゲイタウンも、住めば都というやつで。
普通のシティのストリートより、慣れれば安全だった。だって彼らは初めから『女には興味がない』のだから。
余計なナンパに合うことも、しつこく絡んでくる男性もおらず、本当に楽だった。

たまに2m級のドラッグクイーンなおかまちゃん達に、「子猫ちゃん、こっちにおいで」なんてからかわれて声をかけられるくらいで、いくら夜遅くてもいつまでも明るい街は、怖さは微塵も感じずに、まったくスタスタと歩いて帰れた。

「え?なんで?なんでクラブに行くのに水着着て行かなきゃいけないの?マスト(絶対)なの?」「だって書いてあるんだもん、ドレスコード!水着!」「????」

なぜだか分からないが、今日の夜遊ぶ約束をしているマリが、クラブに行くのに水着を着て来いと言う。
もちろん、上に洋服は着て行くのだけど、下に水着を着ていないとダメだとか。聞いたことのないドレスコードに、頭の中に???しかなかったが、言われるままに水着を着こみ家で待っていた。

「ゆきちゃーん!!」マリがオーストラリア人の彼と一緒に家に迎えに来た。
今日行くクラブは、うちから徒歩3分くらいの、要するにゲイタウンの中の、ちょっと有名なクラブだった。”Hi Toby” “Hi, Yuki-chan”今日は3人でそこに侵入するのだ。

ちょっとリビングでくつろいでから、3人でそのクラブに向かった。
いつもより余計に行列のできたそのクラブの前は、なんだかいつもより仰々しい感じがした。
無表情なボブ・サップみたいな黒人さんの門番が、皆にIDチェックをして”Go” か“No”で選別をしている。
身長144cmの子供みたいなあたしが中に入れる自信は微塵もなかった・・。が、とりあえず3人で並んでいた。
「あたし無理じゃね?これ・・。」「大丈夫だって!トビーもいるし、きっと入れるよ!」
普通のクラブやバーに入ったり、お酒を買ったりするのも、子供にみえる私は一苦労だった。
しかも、この融通のきかなそうなボブ・サップに、わたしは許してもらえる気がしなかった。

20分程待ってようやく、私たちのチェックの番が来た。オーストラリア人のトビーはまあ、普通にパスした。
マリがボブ・サップに凝視されている。IDを見せ流暢な英語で自分は成人しているとボブ・サップにたたみかけている。
そして、マリに決定を下す前に、ボブは私を見下ろした。(う、やっぱりダメだ・・。)

心の中であきらめの言葉をつぶやいた時、ボブはマリに「この子も友達か」と聞いた。
マリは張り切って”Yes, she is!!”と答えた。と同時にボブは私たちに”No”と言った。

ガーン・・。わたしは会話もせずに”No”と言われて落ち込んでいました。
トビーがそれをフォローするように、わたしのIDを見せ、彼女は子供に見えるけど26歳なんだ!と必死で説明してくれましたが、ボブは「姉かなんかのIDだろ、彼女は子供だ」ときかず、私たちに”No”を言い続けていました。

すると、うしろから “Oh, Kitty cat. What are you doing ? ” (あら、子猫ちゃん。一体何をしているの?)と話しかけられ、振り向きました。
そこには、よくゲイストリートで私に声をかけてくる2m級ドラッグクイーンのおかまちゃん、(ドロシー)が立っていました。

この間、暇だったので、彼女に呼ばれてバー入り口で少し話をしたばかりでした。
彼女は毎日ゲイストリートを無防備に歩く小さなアジア人の女の子(私)に興味をもっており、何歳で何処から来たのか、今シドニーで何をしているのか、と色々聞かれ話をしたばかりだったのです。
26歳というと、本当に驚いていたけれど、彼女は私を信じて、頑張って素敵な歌手になさいと励ましてくれ、お小遣いまでくれていました。

“ドロシー!わたし、ここに入れてもらえないの!” とわたしが言うと、ドロシーは、“あら、かわいそう。入りたいんでしょう?入れてあげるわ”
と、ボブ・サップに、彼女は本当に26歳で歌手なのだ。と説明し、入場を許可するように説得してくれました。ドロシーはこのクラブでたまにショーをしていたのです。
ボブ・サップは変な顔をしながら、君に言われちゃ仕方がないと、責任は取らないからな。と念を押しながら私とマリに水着を着ているかと聞き、ようやく”Go”と言いました。
ドロシーにお礼を言い、意気揚々と中に入りました。

重たい扉を2枚開けて、階段を降り、また重たい扉を開けると、そこには凄まじい光景が繰り広げられていました。
普段は広いダンスホールであろう空間に、プラスチックの塀が立てられ、一面に泡風呂というかそんな光景が広がり、その中に絡み合う男と男、女と女、たまに男と女、踊り狂う人、おぼれる人、天井からは滝の様な泡がなだれ落ちていました。

これが、噂のバブル・パーティです。日本では近年ようやく行われていましたが、海外では結構ある種類の人気パーティのようでした。
もちろん、私とマリは初めてその光景を見たので絶叫しました!「えええ!?なにこれ!!?すごすぎるーーーー!!!」

最初はこわごわ、入ってキャーキャー騒ぎ、やっぱり服を脱がなきゃダメだとロッカーに全てをぶち込んでお酒を買うお金だけ水着に挟んで、泡のフロアに飛び込みました!
泡だらけ!そりゃもう泡だらけ!それをさらにサイバーライトとDJが皆を煽り、大きな会場を埋め尽くす人、みんな全てが半狂乱で泡遊びをしていました!
完全にみんな子供。とてつもない笑顔!なんともとんでもないイベントです。

わたしたちも、完全にバブルの虜になり全身全力で泡の中で騒ぎ続けました。
途中、HGみたいな、笑。パツパツの皮のセクシー衣装の男性がステージやポールで踊るショーがあったりと、なんだか知らないけどみんな大興奮でドンチードンチー大騒ぎでした。

凄かったなあ、でもあれ、ゲイタウンだから自由に騒げて面白かったんだろうなあ、普通の男女だったら知らない人に触られまくりそうだし、怖いしきっと気持ち悪いなあ。
とか思いながら、全身びしょ濡れの泡まみれでふやけた体で疲れ果てて帰宅しました。
マリは頭に泡を乗せたままバスに乗って帰って行きました。最高の夜でした。

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