「南半球に行くと、水の渦巻きが逆らしいよ」

シドニーに行く前、友人に言われたのをふいに思い出して、キッチンシンクに溜まった水が流れるのを、ぼうっと見つめていました。水が流れ終わってから、果たしてその渦がどっち向きだったのか、日本ではどんな風に流れていたのかも思い出せなくて、結局あきらめて、リンゴをむいて食べました。水の渦巻きの向きなんて、きっと人間の生活には大した影響がないのだ。体調が良くなったり悪くなったりするなら、別だけど。

それに、後でネットで調べたら、そんな小規模の水の渦ではコリオリの力はほぼ無関係の様です。台風とか、地球規模の渦で初めてコリオリの力が働くとのこと。コリオリ。一見興味深いが、結構どうでもいい。ちゃんと調べたらおもしろいのかもしれないが・・。

シドニーに来て、あっという間に3ヶ月が経とうとしていました。ホームステイが終わってから初めてハウスシェアした家で事件に巻き込まれた胸の傷も、少し癒え、新しいゲイタウンの安い家にも慣れ、新しいハウスメイト達とも楽しく暮らしていました。新しいハウスオーナーのおじいちゃんは、たくさんのフリーフードを私たちに与え、いつも優しく見守ってくれるサンタクロースみたいな存在でした。

シドニーはビーチが最高です、みんな海が大好きで1年中海に行きます。わたしもビーチが大好きになり、暇さえあれば友達と海へ行きました。砂浜で遊ぶもよし、海でチャプチャプ浮かぶも良し、ただ、海を綺麗に保つために、ビーチでの飲酒が規制されていました。なので、そのかわりにビーチの周りには所狭しと素敵なカフェやレストランがあり、そこのテラス席で海をみながらのんびり過ごす時間が最高の贅沢でした。

わたしは、シドニーで出会った先生のもとで、ジャズボーカルを学んでいました。もともと日本で音楽経験があり先生に気に入られた私は、渡豪して若干3ヶ月で、先生のギグについて行っては、オーストラリアのミュージシャン達と一緒に演奏する機会を与えられていました。海外でそんなにすぐにステージの仕事がもらえるとは、なんとも幸運なことです。今でもその先生に出会えたことは心から感謝しています。

シドニーは、小さなNYと呼ばれるほど多種民族が住んでおり、日本語と英語だけのリスニング能力では理解できない言葉が常に沢山飛び交っていました。多民族が入り混じる中、オーストラリア人は、とても大らかな人と異民族を嫌う潔癖症な感じの人とに分かれており、後者は時に私たちに辛くあたりました。例えば、お店のひとに話しかけても無視されたり、バス停でずっと待っていて、やっとバスが来たと思ったのに、アジア人一人ではバスが止まってくれないとか。笑えますよね、でもその場にいると大変に面倒な問題です。

ものすごく悔しい思いもしますが、困っている時に声をかけてくれる優しい人も居るものです。態度の悪い店員さんを叱ってくれる人が居たり、バスの後ろを走っていた車のおばさんが、可哀想にと声をかけて目的地まで乗せて連れてってくれたり。捨てる神あれば、拾う神ありと、そんな毎日でした。
それに、海外に居ると自分のアンテナというか、色んな感覚が研ぎ澄まされているという感じがして、私は好きでした。母国にいる時の安心感とは全く違う、危機感というか緊張感のようなモノが、いつも自分の中心にありました。目や耳や鼻など、五感はもちろん、第六感的なモノもいつもより多く良く働くのです。
例えば、日本にいるとかなり方向音痴な自分が、まったく知らないこのシドニーの街で全然道に迷わないのです。行きたい場所や、欲しいモノを探せばすぐに見つけられました。なんだか不思議な勘が働くというか、本能的なモノがすごく優れているのです。これは海外に滞在するモノ特有の状態なのでしょうか?ただ単に、緊張感からくる敏感さでしょうか?

これらがもし、コリオリの関係で、渦巻きの問題なのであれば私は北半球よりも南半球に向いているんじゃないかと、ふと思ったりしました。わたしは、この国居た方が有能で居られんじゃないかと・・、何だか本当にそんな気がしたのです。

コリオリ・・、渦巻き・・。私は、南半球に居る方が有能・・。




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(女子のお悩み解決コラム -WomanNews ウーマンニュース-)