2015年に逝去された妖怪の父・水木しげるさん。現代に生きる人たちは、「もう少し目に見えないものに畏敬の念を持って生きた方がいい」と、いつもおっしゃっていました。「恨み」や「怨念」で凝り固まった幽霊とは微妙に違って、日本古来の「八百万の神」の思想に根ざした不思議な存在である妖怪たちを、水木さんは現代人に親しみやすいカラーの絵とエッセイで、誰にでも手にしやすい価格の妖怪百科事典を岩波新書から1992年に出版してくださいました。筆者の第二の故郷・東京都調布市の誇りでもある漫画家・水木しげるさんの『妖怪画談』から、WomanNews読者のみなさんに伝えたい“女子妖怪”を5人(?)、厳選してご紹介させていただきます。

【産女(うぶめ)】

昔のこと。難産で死亡した女性が死後、産女という妖怪になって現われるといいます。川で泣いている女性に「どうしました?」と声をかけると「子どもを抱いてください」と言う。言われたとおり抱き上げると、その赤ちゃんは石であったということです。日本の各地で大体同じような話が伝えられており、山口県では妊婦さんが亡くなった場合はそのまま土葬はせず、赤ちゃんと分身せしめたといいます。そうしないと産女となってさまよってしまうと言い伝えられてきたようです。

【二口女(ふたくちおんな)】

生みの子ではない子ども、血のつながりのない子どものことを継子(けいし・ままこ)と言います。人権意識が希薄であった昔、継子のことを毛嫌いし、憎んだ末に食べ物も与えずに餓死させるというとんでもないことが、貧しい農村部を中心にしばしばあったと言います。こういうことをすると、やがて生まれてくる実の子どもが“二口女”となって生まれてくるという伝承です。二口女は食事をするときに長い髪の先が蛇となって後頭部にある第二の口の箸の代わりをします。第二の口の方に食べ物を与えないと、わけのわからないことをわめきちらすようです。ケチな男が、飯をあまり食べない女性を探してお嫁さんにすると、食べないわりには米がどんどん減るために、不思議に思って天井裏から妻の様子を覗いてみると、第二の口に飯をホイホイ放り込んでいたとのこと。意地悪もケチも、ろくな結果を生まないものなのですね。

【正塚婆(しょうづかばばあ)】

別名、奪衣婆(だつえばばあ)。“懸衣翁(けんえおう)という爺さんの鬼と二人一組で地獄の入り口にいて、死者の着物を剥ぐ役目を果たしています。大抵の地獄絵にはこの婆さんの姿が描かれており、正塚婆の姿が見当たらない地獄絵は、眼を描いていない龍の絵のように物足りなく感じられるようです。正塚婆は亡者から剥いだ着物を木の枝にかけて、そのしなり具合で罪の重さを計ると言います。

【雪女】

東北、上信越、山陰など、冬の間は深い深い雪に埋もれてしまう地方に広く伝わる、日本の女子の妖怪を代表する存在。激しく雪が降る夜に山小屋などに現われ、人間に氷のような息を吹きかけて死へと誘(いざな)う美しい女性の妖怪です。新潟県南魚沼地方の山村では昔、凍死者が発見されると村の年寄たちが「また一人、雪女に殺(や)られたな」と言ったそうです。地域によって微妙な違いがあるようですが、運よく命を奪われなかった場合でも雪女に遭ったことを誰かに話すとたちどころに命を取られてしまうという点は、共通しているようです。それでも、雪女との間に生まれた子どもの命が奪われたという話しは聴いたことがありません。雪女はきっと、やさしい女性なのだろうと思います。

【濡れ女】

その昔、越後の国(今の新潟県)と陸奥の国南部の会津藩(今の福島県)の境をなしていた川に現れたという、顔は人間の女性の顔だが蛇の体をしていて、常にその長い髪が濡れているという伝承に由来する妖怪。尻尾が3町(約327メートル)先まで届くため、これに出遭ったら最後けっして逃げ切ることはできず、食われてしまうと言います。この妖怪は、ヘビという生き物を昔から怖れる人間の心と、女性の執念を恐れる男性の心が合体して創り出したような気がしてならないのは、筆者だけでしょうか。

参考:カラー版『妖怪画談』水木しげる著、1992年(岩波新書)



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