中島みゆきさん作詞・作曲の楽曲で、『化粧』という作品があります。ご本人による歌唱のバージョンは1978年リリースのアルバム『愛していると云ってくれ』の中に収録されていますが、最近では大竹しのぶさんが歌ったり、かつては坂本冬美さんや小田和正さんもカバーしていましたのでカバー作品の方でご存知の方も多いかと思います。この曲、女子の「業(ごう)」のようなものを歌った楽曲としては、これほど凄い迫力の歌を筆者は他に聴いたことがありません。


【化粧なんてどうでもいいと思ってきたけれど 今夜死んでもいいから きれいになりたい】

お化粧なんかにとんと無関心な女子の人、いますよね。お化粧しなくてもかなりイケてることの裏返しのような気もいたしますがそれはともかく、そんな「化粧に無頓着な女子」が、しかし「今夜だけは何が何でもきれいになりたい。いや、なってやる!」と歌っている曲がこの楽曲なのです。男子の方から切り出した(と思われる)別れ話に対し「こんちくしょう!」とばかり、「あいつが本当はこんなにきれいだったんなら、あいつを捨てなきゃよかった」と言わせてやるわと、歌っている歌がこの『化粧』です。


【バカだね バカだね バカだね あたし 愛してほしいと思ってたなんて】

しかし、この『化粧』に出てくる男子って、どんな人物なんでしょう。『化粧』の詞を読むと、女子が思いを書き綴って出した手紙の数々を、他の女子と一緒に読みながら笑い飛ばしてしまうようなとんでもない奴というふうに、とれなくもありません。そして、女子に「あたし、バカだね。愛してもらえるつもりでいたなんて」みたいなことを思わせてしまうとは、何だか鼻持ちならない男のようにも思えます。「あたしなんかとは身分が違うんだから、しょせん愛してもらえるはずなんかなかったのよね」といった気持ちに女子をさせてしまう男がもしいるのだとしたら、「戦前じゃないんだからやめてくれ」と言いたいところですよね。


【大竹しのぶさんによる歌唱も素晴らしいが、桜田淳子さんによる歌唱がなぜが泣けます】

さて、この『化粧』という中島みゆきさんの名作、ご本人である中島みゆきさんによる歌唱は別格として、冒頭にもご紹介した大竹しのぶさんによるパフォーマンスがド迫力があって素晴らしいです。自分のことを「バカだね。バカだね」と責めながら、同時に自分を捨てた男に対してドスの効いた脅しをかけているようにも聴こえます。大竹さんの常人離れした感情移入力は、役者さんとしての演技のみならず歌い手としてもその才能の凄さに舌を巻くばかりです。ユーチューブで大竹さんが『化粧』を歌っているライブ・パフォーマンスを観ることができますので、一見の価値があることを申し上げておきたいと思います。

でも筆者がいちばん好きなのは(というよりもいちばん“泣ける”のは)、1978年に桜田淳子さんが発売した全曲中島みゆき作詞・作曲作品で構成されたカバー・アルバム『20才になれば』に収録されている『化粧』です。桜田さんは後に1981年の元日、今度はアルバム・バージョンとは全く別のアレンジでこの『化粧』をリリースしています。いずれも聴いていると涙がでてきてしまうくらい切ない女子心が伝わってきて、胸に突き刺さります。おそらく桜田さんご自身も、とても大切になさっていた持ち歌の一つだったのではないかと思われます。

桜田淳子さんといえば言わずと知れた1970年代の日本を代表するトップアイドルで、1980年代に完全に女優に転向してからも歌手時代以上の素晴らしい作品をたくさん残された女性です。桜田さんが歌う『化粧』のライブ・パフォーマンスもユーチューブで数通りの動画を視聴することができますが、大竹しのぶさんとはまた違って静かに、自分を客観視しながら切々と歌い上げるその様子は男子心を今でも打ちます。


それにしても、「自分を捨てた男が捨てたことを後悔するくらい、死んでしまうほどのリスクを伴う化粧をしてでもいいから、きれいになりたい」という女子の業。男子どもはとてもじゃありませんが、かないません。



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(女子のお悩み解決コラム -WomanNews ウーマンニュース-)