年を取れば取るほど魅力を増して行く人が、ごく稀にいます。吉川晃司さんという今年で51歳になるロック・ヴォーカリストで俳優の男性も、数少ないそういう人の一人ではないかと思います。


【武勇伝を数え上げたらキリがないが、その発言の背後にはしっかりとした問題意識と読書量がある】

吉川晃司さんの武勇伝を数え上げたらきりがありません。広島の名門私立男子中高一貫校である修道学園時代は世界ジュニア水球選手権大会の日本代表で2年連続で全日本高校最優秀選手に選ばれたほどの逸材。最年少日本代表選手としてイタリア・エジプト遠征に参加した経歴も持っています。水球選手として慶應義塾大学に推薦入学できたにもかかわらず佐野元春さんのコンサートを聴いてロック・スターを目指すことになり、高校を卒業して上京。18歳のときシングル『モニカ』でデビュー後立て続けにヒットシングルをリリースするも19歳で出場した紅白歌合戦での“大暴れ”が原因でその後10数年間にわたってNHKへの出入り禁止。飲み友達だった生前の尾崎豊さんと路上のゴミ置き場で朝まで寝入ってしまったり、独立して事務所の社長に就任した際「利益が出るまでは窓もない地下のスタジオで暮らす」と社員に宣言して結局12年間スタジオで暮らして肺にカビが生えたりと、もう滅茶苦茶です。

ところが、ただの滅茶苦茶な男かと思ってそのお話しされることを聴くと、これが滅茶苦茶どころか今の日本でこれほど真面目に弱い立場の人たちや子どもたちの時代のことを考えている人も珍しいのではと思うくらい、しっかりとした問題意識と驚くべき読書量をお持ちの「硬派」なのです。


【ラジオ番組でのコメントの内容が素晴らしい】

その発言がいかに的確にこの社会の問題点を突いているかは、吉川晃司さんがライフワークのひとつとして続けているラジオ番組でのコメンテーターとしての言葉を聴けばよく分かります。たとえば吉川さんは2010年から2013年にかけてジャパンエフエムネットワークに自身のレギュラー・トーク番組を持っていましたが、そのなかで次のような趣旨のことを述べています。

『いま政治がやっているような金融を刺激する方法だけで経済を活性化させようというのはムリ。その意味でいまの政治はなんの経済政策もやっていないのと同じ。経済というのはハードウエアであれソフトウエアであれ、大規模な工業製品であれ職人の手作り品であれ、あるいは画期的なシステムの設計図であれ、これまで存在しなかったものを創造することではじめて「価値」が生まれるというもの。金融というのはそうでなく物事の関係性のバランスを変更したり刺激したりするだけのものだから新しい価値は生まない。株価が上がったとか円安で輸出して儲かったとかは、政治と近い特定の企業にとってだけ美味しい話しであって、オレたち一般の市民の生活を本質的に向上させるものでも何でもない』

また、広島市の出身で被爆二世でもある吉川さんはこのようなことも言っています。『そもそも国民投票で決まったことなら文句は言わないよ。だけど、そうでない限りオレたちの誇りに関わるようなことをたかだか数人の行政に携わる人間だけで勝手に決めるなよ。オレたちの(絶対的平和主義という)誇りを勝手に傷つけるなよ。私は、絶対にこういうことは許したくないです』

今のわが国の政治家・メディア・財界人の中に、揺るぎない力を持った権力者に対してこのようにキッパリと自分の意見を言える人が、どれくらいいるでしょうか。


【『あの夏を忘れない』にみる“エンターテイメントは聴く人が引かない程度のプロテストを”という信念】

このように反骨精神の塊のような吉川晃司さんですが、本業である楽曲作りにおいてはそういった反骨精神をある程度オブラートに包む方法を採用しています。たとえば、『あの夏を忘れない』という曲。吉川さん自身が作曲し、母校である府中町立府中小学校の子どもたちと共作詞した、広島の原爆で被爆した人たちへ捧げた楽曲です。吉川さんは音楽やロックがあくまでもエンターテイメントであることをしっかりと認識されているため、「聴く人が引いてしまわない程度の表現方法」をもって「反戦」や「反核」を歌っているのです。

あの日 お日さまが割れて 青空が消えて 残った影
あの日 ともだちの声も 家族の笑顔も さらった爆風(かぜ)
あの夏を忘れない 未来がまだ続くように 幸せってなんだろう その答えはこの手から きっとはじまる

(中略)

だから 約束しよう 平和を守っていくことを
だから 約束しよう 君を大切にすることを

<『あの夏を忘れない』 https://www.youtube.com/watch?v=uRTXxIrA6Qc


いかがでしょうか。この見事に抑制の効いたプロテストの表現は。これならば「吉川晃司いいけど、ちょっと引いちゃうよね。偉い人から睨まれたくもないし」という本音を持つファンの人たちも安心して堂々と人前で吉川晃司を聴くことができるではありませんか。でも、女子のみなさんはそんなこと、筆者のような者がわざわざ言わなくてもとうに解っていらっしゃいましたよね。同じ時代に同じ郷土(くに)で生きるわたしたちのスーパースター・吉川晃司のことですから。




吉川
画像引用元:公式Twitter

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