ロック、ロックンロールとは、何なのでしょうか。音楽的な定義づけをすることはそれほど難しくはありません。ジャズやリズム・アンド・ブルースのようなアフリカ系のビート音楽と、西欧の五線紙(クラシック)音楽の両方を源流として成立してきた、比較的強く速いビートとリズムに乗せて主にエレキ・ギターとシャウトを含めた迫力のあるヴォーカルで奏でる音楽の一形態のことです。

しかしながら、この定義ではロックが持つ独特の「精神性」については何も説明できていません。それを説明したのが2016年1月10日に亡くなられたイギリスのロックスター、デビッド・ボウイさんです。ボウイさんは1975年にロックという音楽の精神性について、「権力や既存のメディアの外部に位置する人々を代行する声であり、社会から疎外されたものとして存在する一つの共同体を代行する声である」と、見事に定義づけていたのです。

そしてボウイさんは、ジョン・レノンやポール・マッカートニーがザ・ビートルズというバンドを通して実現した「権力を持たない人々を代行する声」としての約束を、その後のロックンロールは果たしていない。だから「厳密な意味ではロックは死んだのだ」と述べているのです。

では、わが国に目を向けたとき、J-POPスターの中に<本物>のロックンローラーというのはいるのでしょうか。実は何人か存在するので、同胞女子のみなさんにはぜひ知っておいていただければという気持ちで、紹介させていただきたいと思います。

<参考:『異星人デビッド・ボウイの肖像』マイルズ編、柴田京子訳(1986年シンコー・ミュージック)>

【尾崎豊(1965-1992)】

「ブリティッシュ・ロックって何?」と訊かれたら、「ビートルズやローリング・ストーンズ、ボウイやクイーンの音楽だよ」と答えておけば大丈夫なように、「和製ロックって何?」と訊かれたなら、「尾崎豊を聴いてごらん」と答えるのがいいでしょう。

音楽的には佐野元春さんの影響を色濃く受けていると思われますが、その生き方、その言葉遣い、その感性、その思想、その歌い方は和製ロックのバイブルとして、永遠にリスペクトされつづけるでしょう。ロックファンの筆者としては、格好が突っ張っていても内面がやたらと現状肯定的なお兄さんたちよりも、やさしい好青年なのに内面に「権力」や「支配」に対する闘争心を秘めた尾崎豊さんが好きです。今、生きていらしたとすれば50歳です。

【忌野清志郎(いまわの きよしろう 1951-2009)】

本名が栗原清志の清志郎さんは3歳のときにお母さまを亡くし(享年33歳)、伯母さま夫婦に引き取られて育ちました。お母さまが最初に結婚した男性は、結婚して間もなく兵隊に取られ、戦死されたそうです。

後年このことについてお母さまが恨みを書き綴った日記を発見し、清志郎さんは「権力を持った人が自分の権勢欲を満たすために庶民を兵隊として引っ張り、日常の全てを奪うなんて許せない」と、強く感じたそうです。清志郎さんのロックの原点はここにあり、お茶目な精神を失わずに58歳で亡くなるまで一貫して反戦と権力の暴走チェックをそのパフォーマンスを通して訴えつづけました。

【沢田研二(1948-)】

わが国にも正真正銘のグラムロッカーが一人だけ存在します。沢田研二(本名、澤田研二)さんがそうです。1967年にザ・タイガースのヴォーカル「ジュリー」としてメジャー・デビュー以来、今日に至るまでおよそ50年にわたってロックスターでありつづけ、しかも還暦を迎えてからのここ7~8年は、ブリティッシュ・グラムロックの星デビッド・ボウイが言う「ロックが忘れてしまった抵抗という約束」をかたくなに歌いつづけています。

沢田さんが2008年にリリースしたアルバム『Rock’n Roll March』には、沢田さん自身の作詞による『我が窮状』という曲が収録されていますが、まるで今日(2016年)の世の中の状況を予言し、それを乗り越えるための道標を示しているかのような楽曲で、鳥肌が立ちます。おそらく沢田さんは、たとえその身柄を拘束されたとしても「歌わなければならないことを歌いつづける」ことができる日本で唯一人のロックンローラーなのでしょう。

余談になりますが、沢田さんのザ・タイガース時代の盟友でドラマーだった瞳みのるさんはタイガース解散後高校に入り直した後、横浜市にある私立高校の国語科教師になりました。筆者はその教え子の一人なのですが、瞳先生の話しからも沢田さんやザ・タイガースのメンバーの人たちが、どれほど「生きる」ということに真摯で、誠実であったか、うかがい知ることができます。

沢田研二さんというスーパー・ロックスターはおそらく、その身が朽ち果てるその時まで、権力と権威に抗う市民の声を詩にして、歌いつづける覚悟なのであろうと思います。



music_band_electric_guitar
(女子のお悩み解決コラム -WomanNews ウーマンニュース-)