厚生労働省(以下、「厚労省」)は2015年11月12日の労働政策審議会分科会で、「マタハラ(マタニティハラスメント=働く女性が妊娠・出産などをきっかけに職場などで受ける嫌がらせや不当な扱いのこと)」に関する初めての調査結果を発表しました。
それによると、何と正社員の女性の21.8%、契約社員の女性の13.3%、派遣社員の女性では48.7%にのぼる人がマタハラを経験していた実態が明らかになり、衝撃が走っています。

<参考:『読売新聞』オンライン 2015年11月12日付>


【封建社会じゃあるまいし信じられないマタハラの実態】

働く女性たちが受けたマタハラを内容別でみてみると、その内容は大きく分けて4種類に分類できるようです。

1 「迷惑ですよ」「お辞めになったらいいんじゃないですか?」といったような、妊娠した女性が正当な権利を主張しにくくなるような発言を受けた……47.3%
2 「雇い止め」に遭った(主に派遣社員の女性)……21.3%
3 「解雇」された……20.5%
4 自己都合退職を強要されたり非正社員への転換を強要された(主に正社員の女性)……15.9%
ざっとこのような4通りのようです。「封建社会じゃあるまいし、何時代の話しなの?」と尋ねたくなるのは、筆者だけではないだろうと思います。

<参考:『朝日新聞』デジタル 2015年11月12日付>


【かくもマタハラが横行している国は日本だけなのか?】

このように、近代社会とは思えないほどマタハラが横行している国というのは、日本だけなのでしょうか?答えは、先進諸国に限って言えば「YES」です。
OECD(経済協力開発機構)が公表している、「16歳未満の子どもを持つ25~44歳の男女のフルタイム労働者の平均賃金で男性賃金を100とした場合の女性賃金」に関する各国2010年前後のデータがあります。それによると、イタリアの女性賃金は男性賃金の97%でほぼ男女平等。オランダは94%でベルギーは90%。フランスは88%、オーストラリア81%、デンマーク80%、イギリス79%、アメリカ合衆国77%、ドイツ75%、カナダ71%。韓国は子どもを持つ女性の賃金がやや低くなって男性の54%なのですが、わが国はそれどころではなく39%で、OECD30か国中最低。OECD平均である78%のちょうど半分でしかなかったのです。

<参考:『OECDジェンダー白書~今こそ男女格差解消に向けた取り組みを!~』>

この数字が何を意味しているかというと、わが国では働く女性が子どもを出産すると、たとえフルタイムの勤務であったとしても相対的に賃金が低い雇用形態での勤務に移行させられている、ということです。アルバイトや、パートナー社員といった呼称の契約社員などがそれです。
たとえば正社員が賞与も考慮に入れると平均して月38万円の収入があるとした場合、同じ仕事を同じくらい長時間にわたってやったとしても月収14万8千円程度しか貰えないパートナー社員に移行させられていたとしたら、収入は本来貰えていたはずの金額の39%程度になってしまうわけですね。わが国で起きているマタハラの実態は、労働経済学的に見るならばそういうことなのです。


【マタハラ打倒策のカギは、実際にマタハラをしている人たちがどんな階層に属しているかの分析が握っています】

このように先進国として恥ずべき行為であるマタハラを実際にしている人たちとは、企業社会の中のどのような階層に属する人たちであるのか。この点を分析しないことには、マタハラ打倒の具体策は見つけ出せません。冒頭にご紹介した厚労省の調査では、実際にマタハラをしたのは次のような層の人たちであるという結果を発表しています。

実際にマタハラをしたのは、

●直接の上司にあたる男性……19.1%
●役員・経営者など(男性)……15.2%
●直接の上司にあたる女性……11.1%
●同僚や部下(女性)……9.5%

ということなのです。もうお気づきですよね。マタハラをしているのは男性ばかりではなく、同性として妊娠した女性や子どもを持つ女性の気持ちが分かりそうな、女性の上司や同僚がかなりの割合でマタハラをしているのです。

<参考:『朝日新聞』デジタル 2015年11月12日付>


【正社員女子は「イクボス」を育て、派遣女子は法に訴えてマタハラを打倒しましょう】

男性の中には、自分自身の経験や元々の考え方から、部下や同僚が育児を理由に休暇を取ったり時間外労働をしなかったりすることについて、女性以上に理解のある人がときどきいます。
そういう傾向のある中間管理職や役員・経営者のことを「イクボス」と呼ぶようですが、正社員女子が理不尽なマタハラを打倒するためには、社内にこの「イクボス」になれそうな素質も持った男性管理職を発掘し、イクボスに育て上げることに賭けてみるという手があります。
何故ならば、正社員女子が訴訟や法廷闘争といった法的手段をもってマタハラと闘うことは、たとえマタハラとの闘いに勝利したとしてもその後の職場での人間関係が気まずくなるからです。そこへいくと、イクボスになれる素質のある男性に目をつけておだて、立派なイクボス管理職に育てておけば、経営陣や女性管理職らの間にも入って育休やノー残業の経営上のメリットなどもプレゼンしてくれて、鬼に金棒の存在となってくれる可能性があります。
女性役員や女性管理職が自らマタハラをしているようなこの社会では、逆説的ではありますが男性のイクボスを育てることの方が効果的で、現実的です。

一方、派遣女子の場合、闘い方は正社員女子とはまるで違ってまいります。派遣女子は、どちらにしてもいずれ働く現場が変わります。で、あるならば、「男女雇用機会均等法(以下、「均等法」)第9条」に明記されている、妊娠・出産した働く女性に対して不利益な取り扱いをする行為の禁止(これがすなわち一切のマタハラ行為ということになります)事項をもってして、徹底的に法で闘うことの方が、いかなる観点から見てもベターです。
均等法は女性労働者が妊娠・出産したことを理由にした解雇や残業が出来なくなったことを理由にした不当な扱いなどを明確に禁止していますので、弁護士に相談して闘えば相当の確率で勝利することができます。派遣先は変わりますから、一つの職場でずっと気まずい思いをしつづけるということはないので、派遣女子には法廷闘争でマタハラと闘うことをお奨めいたします。念のため、弁護士費用が賄える程度の貯金だけは日頃から貯めておきましょうね。

<参考:厚生労働省公式ホームページ>




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