『コンビニ人間』で第155回芥川賞を受賞した小説家の村田紗耶香さんは2003年に『授乳』で群像新人文学賞優秀賞を受賞してデビュー以来2009年に野間文芸新人賞、2013年に三島由紀夫賞を受賞するなど確固たる実績を積み上げてきた実力者でありながら、現在でもコンビニでのアルバイトを続けていることで話題になりました。しかし考えてみると今は勤労者の4割が非正規雇用であるうえに女性の場合は正規雇用の人よりも非正規で働く人の方が多い時代です。寝ているとき以外のほとんどの時間を勤務先に捧げて他のことは何をする時間も持てない正社員の人よりも、収入は低くても自分の時間が持てるパートやアルバイトといった非正社員の人たちの中にこそ村田さんのような凄いプロフェッショナルが居るというのは、ある意味で自然なことなのかもしれません。


◆身近にいる非正規女子が実はこんな凄い人だったとは

筆者自身は凄い人でも何でもなく至って凡庸な人間で、40代までは雑貨卸売の商事会社を営んでいた商売人だったのですが、わが国において国内市場をメインに物品販売業を継続して行くのは今後は難しいと判断して51歳のときに商売を畳み、およそ30年ぶりに随筆や時評の執筆で飯を食う著述業に復帰しました。作家の柳美里さんも仰っていますが「日本に、物書き業だけで生活できている人は30人程度しかいないはずだ」というのは本当で、紙の本や紙の雑誌の市場規模が極端に縮小してしまったこの業界(小説・ノンフィクション・批評・エッセイ・コラムなどの文筆業者の世界)で本業である“物書き仕事”だけで食べて行けるような人は数えるほどしかいないというのが実態です。なので筆者も例にもれず、カルチャー教室の講師や雑貨商時代に習得した梱包技術を活かしたアルバイトなどで副収入を得ています。非正規労働者の一人ということです。

筆者がアルバイトをしている職場にも大勢のアルバイトのかたがたがいらっしゃいますが、正直な感想を申し上げますと正社員の人たちよりは非正規のアルバイトの人たちの方が、いろんな意味で素敵な人・凄い人が多くいらっしゃいます。アメリカのキャラクター玩具に特化したネット通販サイトを運営する40代の既婚女性。非常に高い技術をお持ちのネイル・アーティストでもある二人のお子さんがいる主婦の女性。留学経験があり翻訳のクラウド・ワーキングでかなり稼いでいる20代の女性。正社員の人たちは「この会社を離れたら何もできないのではないかな」と思わせる人ばかりなのに対して、非正社員のアルバイト女性たちの中には、「この会社を離れても腕一本で生活して行けるだろうな」と思わせる、素敵なプロフェッショナルの人が多くいらっしゃるのです。


◆村田紗耶香さんのパーソナリティーは“非正規女子”の誇りそのもの

話しを村田紗耶香さんのことに戻します。2016年7月19日に東京都内で行われた第155回芥川賞の受賞会見に出席した村田さんは、記者からの「今後もコンビニの仕事は続けるのか?」の質問に対して、「店長に相談して決めたいと思います」と答え、会場中からどっと笑いが起きました。
でもこのリアクション、筆者は村田さんの本音でもあり誇りの表れだとも思うのです。店長と相談して決めるというのは、「芥川賞作家・村田紗耶香として全国的に顔が売れてしまった自分が相変わらずコンビニ店員を続けたら、興味本位のお客さんで店がごった返してしまい、店長にも迷惑をかけてしまうのではないか?」という意味であろうと思うからです。
このように、店の経営や上司の立場について心配できる心を持った人が、果たして正社員の中にいるでしょうか。一方でまた、あの返答には「自分はコンビニのアルバイト店員でもあるけれど本当の姿は小説家。本人を見てみたいという人はどうぞお店にいらっしゃい」という、村田さんのプライドも垣間見ることができるのです。


◆非正規女子は自分を磨きつづければ村田紗耶香さんになれることに気づきましょう

村田さんが芥川賞を受賞したことは本当に意味のあることだったと思います。非正規でアルバイトに勤しみながら「いつの日にか」を夢見て努力をつづける「雌伏女子」の希望となったからです。でも本当は村田さんが芥川賞を受賞できなかったとしても、非正規女子の人生には希望がたくさんあるのです。正社員の人たちと違って自分の好きなことを「食える仕事」にするために技術を磨く時間があるからです。
今これを読んでくださっているアルバイト女子のあなた。あなたが本当に好きなことに的を絞って技術を磨きつづけさえすれば、あなたも村田紗耶香さんになれることに気づいてください。



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