「シャワーは5分まで!とか言われて最初びっくりしなかった?」

「わかる!いったい何が洗えるのかと思った!」

「人って慣れるもんだよね~」「本当にね~」

 

シドニーでの日本人留学生同士ならではの会話だ。たぶん年は2人とも私より若い、22、3歳かな?シティから、Ox Ford St. を抜け、ボンダイへ向かうバスの中。後部座席から日本語で留学して間もなそうな、初々しい会話が聞こえていた。会話に入りたい衝動を抑えながら、前を向いて会話を聞いていた。別に彼女達しか話していないわけではなく、シドニーは「小さなNY」と称されるように、雑多な異民族が混じりあい共存する街だ。何種類もの言語が1台のバスの中で飛び交っている。しかし母国語というのは、やはり耳に入りやすいもので、彼女たちが特別大きな声で話していなくとも、私の耳にその会話は届いていた。まだ二人とも、シドニーに来て一カ月たらずのようだった。

 

海外での生活は、3ヶ月までは観光気分だ。たまにホームシックにはなれど、刺激的な毎日はただただ、楽しい。3ヶ月経った頃に、ようやく観光気分が抜け、だいぶ気持ちが落ち着き、現実的に『海外で暮らす』という心境に慣れてくるのだ。

 

オーストラリアの夏は、基本的に水不足だ。日本のように、シャワーを出しっぱなしにして何十分もシャワーを浴びていたら怒られる。もちろん、日本のようにバスタブのある浴室は少なく、シャワーは5分ほどと決められている家が多い。シャワーを出して全身を濡らし、一旦シャワーを止めて全身を隈なく洗い、再びシャワーを出して全ての泡を洗い流す。そうれば、大概5分程で全てが洗い流せる。初めは、その要領が掴めず、いったいどうすれば5分でシャワーを済ませられるのか?私も思い悩んだ。でも、人間とは幸い、必要となればその環境に自然と慣れていく習性があるものだ。

 

基本的に、シドニーのバスは日本のバスのように「次は~、○○前」的な親切なアナウンスなどない。自分で、周囲の建物等を覚えて、適当な場所でブザーを押して、次のバス停で止めてもらわなきゃいけない。遅すぎれば “It’s too late” (遅すぎる)と運転手に言われてしまうだけだ・・。それが怖くて、最初はバスに乗るのが嫌いだった、道も分からないし。初めて行く場所などに関しては、完全に無理な話だ。難しすぎる・・。

 

でもまぁ、何カ月がいると、そんな理不尽さにすら慣れてくるもので、知らない場所に行くにも、大体近くの建物や通りの名前を憶えてバスに乗れば、自然と程よいところでブザーを押せるようになっていた。不思議なものだ・・。

 

今日は、最近友達になった子の家に、遊びに行くだけで、しかも一本道なので気が楽だ。

目印に覚えていたカフェを通り過ぎたので、適当なところでブザーを押した。

 

バスは、見事にその子の家の近くに止まり、無事に着いた。

彼女に電話をかけ、ドアを開けてもらう。

 

「いらっしゃい、元気~?」彼女の名前はマリと言った。

無邪気な笑顔が印象的で、憎めない可愛い子。ふわふわ、ひらひらした洋服が良く似合う彼女だが、普段はおバカさんを装いながら、実はかなり賢い子だった。私が「どうしてオーストラリアに来たの?」と聞くと「お金が余ったから」と若者らしからぬ答えを返した。

 

彼女とは、同じ留学エージェントにサポートしてもらっている日本人留学生同士だった。妖精のような雰囲気を持ちながら、破天荒で人懐っこい彼女は、とても目立つ存在で。

シドニーでカラオケのある日本人バーで数回会ううちに、自然と打ち解けた。

 

それに何より彼女は、とても歌が上手かった。素人ではないのはすぐに分かった。話しかけてみると、日本のオールディーズバーで、ずっと歌っていたそうだ。ますます興味をひかれ、2人で遊んでみることにしたのだ。

 

「場所すぐわかった?」「うん、一本道だしね、すぐわかったよ。」

「そっか、よかった!とりあえず入って~」

 

大きな家だった。しかし、次の言葉に度肝を抜かれた・・。

「うち、30人くらい住んでるから。うるさいけど我慢してね!」

 

30人・・・?30人って、30人?だろうか?

きょとんとしながら、中に入ると確かにごちゃごちゃと部屋と人と物が共存していた。

「30人・・・?ってすごいね、どういうこと?」歩きながら聞いた。

 

「あ~、なんていうか、バックパッカーみたいな。一軒家なんだけど。その中に30人住んでるの、一部屋に3~5人×8部屋くらい?キッチンとリビングとパソコンルームはみんなでシェア。」なるほど、壮絶な家だ。知らないひとがガンガン話しかけてくる。

 

彼女の部屋には、2段ベッドが2台置かれ、1部屋に4人の女の子が暮らしていた。みんな違う国から来た留学生や長期観光滞在者だった。彼女達のプライベートな居場所は、その、ベッドの上だけということだった。

 

「こんな感じ~、すごいでしょ」マリは笑いながら言った。「確かにすごいね・・。」私は圧倒されていた。やっぱりこの子は強い子だ・・



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