中日新聞と東京新聞に連載され、好評を博したシリーズ『新貧乏物語』。若者の有利子奨学金返済負担の問題やブラック企業・ブラックバイト問題、学費を払うためにカラダを売る学生たちの問題に警鐘を鳴らしつづける中京大学の大内裕和教授が「日本はもう、壊れていますよ……メチャクチャです」と表現しているように、現代のわが国の若い女子たち、男子たちが直面している数々の「ありえない」現実にスポットを当てた、好企画でありました。

その『新貧乏物語』・2016年4月19日の中日新聞の紙面に、医者や経営者や正社員ビジネスマンたちとお見合いや合コンを繰り返している38歳の名古屋市在住婚活女子の言葉が載っていました。曰く、「非正規の男性だけは、ありえない。安定した仕事があって、私より年収の多い人が最低条件」。

【人間の価値を人格ではなく、社会的・経済的階級でしか計れなくなってしまった時代に生きる悲しさ】

この38歳婚活女子の言葉を聞いて、「そんなことを言ったら非正規だけど貴女のことを愛おしく思ってる男子が可哀そうじゃありませんか」とおっしゃるあなたはもう、わが国の大きな流れから取り残されているのです。

わが国はもう、少なくとも都市部におけるサラリーマン社会においてという範疇に限定するなら、人間の価値を人格ではなく社会的・経済的階級でしか計れない時代に突入してしまっているのです。悲しいことですが、事実は事実として見つめなければなりません。

【壊れ、おかしくなってしまったのは市井の女子の方ではない。経営者、正社員、政治家などの特権階級の方】

よく、巨大地震などの大規模自然災害が起きるたびに惜しげもなく億単位の寄付をなさっている、大きな会社の経営者の方がいます。それはそれで立派なことだと思います。ただ、彼にはその前にやるべきことはなかったのでしょうか。

彼は自分の会社で非正規の立場で働いている人たちのために、非正規であっても業績をあげ結果を残した人であれば昇給もあり、賞与も出、退職金の支給対象となれるような制度を作るべきだったのではないでしょうか。そうして人として多少は余裕を持って暮らせるようになった従業員が、500円でも300円でも100円でもいいから被災地のために寄付をするゆとりができるようにするべきだったのではないでしょうか。

つまり、壊れ、おかしくなってしまったのは「非正規男子なんてありえない」と言ってる市井の女子の方ではなく、彼女がせっせとお見合いをしている相手の“特権を手に入れた男子たち”の方だったのです。

【40代以下の女子が非正規の真面目な男子との結婚を現実の問題として考えられる世の中を】

4月19日付の中日新聞の記事には、2015年に20代から40代の非正規労働者を対象に連合が行ったアンケートの結果、実に男性の9割が未婚であった事実にふれています。この数字をみる限り、非正規労働者の男性が結婚をすることは、ほぼ絶望的といえます。

この状況は、近代以前の社会の状況と似ています。どんなに人として優しく潔く、真面目で努力家であったとしても「正社員」「正職員」という階級に属していなければ結婚して家庭を持つことが叶わない。非正規の女子と男子で一緒になって生きていけばいいのにと思うけれど、それだと子どもができたときに子育てにかかるコストが異常に高いわが国では生活が成り立たなくなるという負のスパイラルです。

40代以下の女子が非正規の真面目な男子との結婚を現実の問題として考えられる世の中を何とか作らないことには、わが国は少子化に歯止めがかからないという問題のみならず、同じ国民どうしが階級間で憎しみ合う社会になってしまうおそれがあります。

ここは、日本国民の感性が問われている正念場です。わたしたちは非正規労働者をないがしろにする人を権力の座に就かせない努力をするべきですし、その努力と並行して女子のかたがたには非正規男子のことを今より少しだけ人間性重視の視点でみていただければと、日常の会話の中でお話しする努力をつづけて行くべきなのではないでしょうか。



entrepreneur-593371_640
 (女子のお悩み解決コラム -WomanNews ウーマンニュース-)