非正規雇用の人が働く人全体の4割を超えた今、非正規労働者全員の「正社員化」を叫ぶ声が考え方の一つとしてあります。筆者はこの考え方が出てくることの根底にある感性には共鳴いたしますが、わが国の将来を左右する格差問題解決のための方法論としては、この解決策には賛成いたしかねます。

これほどまでに非正規という働き方が一般的になってくると、女子の中にも男子の中にも思うところがあってあえて非正規の働き方を選んでいる人も少なからず存在するからです。その傾向は、「食べて行くための仕事」と「生涯のライフワーク」とを分けて考えている人に特に顕著にありますが、現実的には中高年と、配偶者がいる女性に多くみられます。

だから「非正規女子というものを(もちろん非正規男子も)なくし雇われて働く人全員を正社員にする」という格差解消策案は、「極論」と考えます。では、どのような格差是正策がより未来志向の問題解決方法といえるでしょうか。

【そもそも非正規雇用のどこがアンフェア(不公正)なのでしょうか】

それでは、そもそもパートやアルバイト、契約社員といった「非正規雇用」は、どこがアンフェア(不公正)なのでしょうか。分かりやすく箇条書きにしてみましょう。

・やっている仕事がほぼ正社員と同じであるにもかかわらず、時間当たり賃金が正社員より大幅に低い。
・賞与が出ない場合がほとんどであるため、毎年夏と冬の賞与時季には精神的な疎外感がある。
・退職金が支払われない場合がほとんどであるため、老後の生活設計というものは成り立ちにくい。
・長年勤続し、現場における業務能力の面では経営管理業務従事者を遥かに上回る技術を持つにもかかわらず、昇給はごく微々たるものでしかない。
・雇用期間が数か月単位で区切られた短期契約であり、景気やその企業の経営状態によって「いつ合法的にクビを切られてもおかしくない」ため、失業の不安が常につきまとう。
・以上から、100万円単位以上の金額の将来のための投資資金の借り入れはまず不可能であり、住まいも持ち家を取得することはほぼ不可能。クレジットカードの取得も相対的に難しい。その点での精神的疎外感とともに、自動車ローンを組めない地方の若年非正規労働者の場合、自家用車などなくても生活ができる東京などの大都市に向かうしかなくさせる。
・何の根拠もなく、正社員よりも人格まで低いような言われ方をされる場合がある。
・勤務時間が短く抑えられているため、社会保険(健康保険・厚生年金)適用の対象外となる場合が多い。

このように、一部の「志があって非正規で働いている人」(俳優や小説家、音楽家などの仕事で身を立てることを目指している人に多い)や「生活して行くだけの蓄えは既にあるので、拘束時間が短い非正規で働いている人」(主に中高年に多い)や「家計のためにプラスアルファの収入がほしい人」(配偶者がいる女性に多い)を除くと、賃金と福利厚生を総合した「待遇」が、「ただ生きて行くだけで精一杯」の水準でしかないというところが、非正規雇用のアンフェアなところであると言うことができるでしょう。

【このアンフェアさを放置すると将来のわが国にどのような恐ろしい事態を引き起こすのでしょうか】

それでは、非正規雇用に関するこのアンフェアさを放置した場合、将来のわが国にどのような恐ろしい事態を引き起こすことになるのでしょうか。

まず、働く人の半数近くになってきた非正規の人たちは今の賃金水準では結婚などできませんから、国の思惑とは逆に人口の減少がおそるべきスピードで進んで行きます。というよりも、(既にわが国ではその傾向が現われつつありますが)子どもという存在自体が、正社員階級の夫婦の間にしか誕生しない存在になってきますので、将来のわが国では、泥臭いサービス産業や製造業の現場や農林水産業の現場に携わる人が日本人の若者にはいなくなり、就業年齢に達した若者の大多数が「汗を流さない」業務(金融業務やシステム設計業務など)の従事者になり、いびつで頭でっかちの産業別人口構造が形成されます。

次に、今はまだ若いので病気が顕在化していないフリーアルバイターの女子や男子たちが中高年になり、病気にかかっても国民健康保険料が払えなくて保険証を取り上げられているため保険医療が受けられず、仕事を失い家賃も払えなくなってくるので、やむなく生活保護を申請するケースが多発してきます。国の財政は完全に破たん状態に陥ります。

そして、これがいちばん懸念されることですが、生活保護を受けるようになった元フリーアルバイターの女子・男子たちが、同じ国民から汚い言葉で罵られその存在そのものを否定されるようになり、アイデンティティの危機に遭遇します。そうなった人たちは、自分たちが住む社会よりはまだ「平等」で「居場所」を与えてくれる(と思い込んで)グローバルな過激思想を持つ疑似国家的な集団に傾倒するようになり、いわゆるテロリズムの温床となって行きます。

【ごく僅かですが、人として情のある経営者がいる企業では、格差是正の取組みがなされています】

そんな中、ごく僅かではありますが、人としてまっとうな情を持っている経営者がいる企業では、非正規労働者の差別と格差の是正をはかろうとする取り組みがなされている例があります。例えば、首都圏のほとんどの主要駅近くに店舗を出している大手のラーメン店チェーンを運営する「H社」などは、もうだいぶ前からアルバイトの人にも夏冬のボーナスを出しています。アルバイトの人の賞与は最高でも10万円程度ではありますが、金額の問題ではなく「自分も、存在を認めてもらえている」とアルバイトの人でも感じられるため、この制度は非常に社内外からの評判がいいようです。人間というのは、これだけでも働く意欲が全然違ってくるものなのです。

【結論としての格差是正策~パート・アルバイトの人にも賞与を出し、同一労働の場合の時間当たり賃金を「指導力と判断力」の違い程度にとどめることを法制化する~】

そろそろ結論に入りましょう。将来のわが国に恐ろしい事態を引き起こす「非正規格差」を是正する具体策です。

1.前述したラーメン店チェーンのH社のように、金額の問題ではなくパートやアルバイトの従業員にも「賞与」を出す。退職金までは現状難しいでしょうが、それも将来的な課題と位置づけます。

2.ほぼ同一労働の場合であるならば、現在、時間当たり賃金に換算すると非正社員を遥かに上回る時給を貰っていることになる「正社員の賃金水準」と比べて、「管理・指導能力と判断能力の違い」程度の差でしかない水準にまで、パート・アルバイトの賃金水準を引き上げる。つまり、非正社員の人が「ただ。生きて行くだけの賃金」を貰うのではなく、「最低限の文化的楽しみも享受できる生活可能賃金」を貰えるように法制化するわけです。

逆の言い方をすると、このようなことすら最初から「無理だ」と決めつけて拒否するような経営者ばかりであるのだとすれば、わが国の将来はあまり明るいものではない、ということになります。女性はいざとなれば強いですから、そのような国からは流出して行ってしまうことも考えられるでしょう。そうなってしまう前に、できることから実行しなければなりません。「アルバイトの女子も賞与が貰える」という姿を、ラーメン屋さんだけの話しで終わらせてしまってはならないと、切に思うのであります。


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